夫れ乾は、天下の至健なり。
徳行は恒に易にして、もって険を知る。
夫れ坤は、天下の至順なり。
徳行は恒に簡にして、もって阻を知る。
諸心を説(よろこ)ばし、
諸侯の慮(おもんぱか)りを研(みが)き、
天下の吉凶を定め、
天下の亹亹(びび)たる者を成す。
是の故に、
変化・云為(うんい)あり、
吉事には祥あり、
象事には器を知り、
占事には来を知る。
天地位を設け、
聖人成能す。
人謀し鬼謀し、
百姓これと能を与(とも)にす。
八卦は象をもって告げ、
爻彖(こうたん)は情をもって言う。
剛柔雑居して、
吉凶見るべし。
変動は利をもって言い、
吉凶は情をもって遷る。
是の故に、
愛悪(あいお)相攻めて吉凶生じ、
遠近相取りて悔吝(かいりん)生じ、
情偽(じょうぎ)相感じて利害生ず。
凡そ易の情は、
近くして相得ざれば則ち凶なり。
或いはこれを害し、
悔いて且つ吝なり。
将に叛(そむ)かんとする者は、
その辞慚(は)ず。
中心疑う者は、その辞枝(えだわか)る。
吉人の辞は寡(すく)なし。
躁人(そうじん)の辞は多し。
善を誣(し)うる人は、
その辞游(うわ)つく。
その守を失う者は、その辞屈す。
現代語訳
乾は天下で最も健やかな働きを持つ。
だからその徳は常に変化しながらも、
危険を知ることができる。
坤は天下で最も従順な働きを持つ。
だからその徳は常に簡素でありながら、
障害を知ることができる。
こうして人々の心を喜ばせ、
諸侯の思慮を深く研究し、
天下の吉凶を定め、
人々がたゆまず努力する道を完成させる。
だから、
変化を見れば行動が分かり、
吉事には兆しが現れ、
事象を見れば道具や仕組みが分かり、
占えば未来の方向が分かる。
天地がその位置を定め、
聖人はそれを用いて文明を築いた。
人の知恵も用い、神霊の知恵も用い、
その力を百姓にまで広げた。
八卦は象によって知らせ、
爻辞と彖辞は事情を語る。
剛と柔が入り混じることで、吉凶が見える。
変化や行動は利害によって起こり、
吉凶は人の感情によって移り変わる。
だから、
愛と憎しみがぶつかれば吉凶が生まれ、
遠近の関係から悔いと吝(ためらい)が生まれ、
真心と偽りが交われば利害が生まれる。
易が示す人間の本質とは、
近い者同士でありながら心が通じなければ凶となり、
互いに害し合い、悔いと吝が生じるということである。
さらに言えば、
裏切ろうとしている者の言葉には後ろめたさが現れる。
心に疑いを持つ者の言葉は枝葉に分かれる。
吉人の言葉は少ない。
せっかちな人の言葉は多い。
善人を陥れようとする者の言葉は軽薄である。
自分の信念を失った者の言葉は弱々しい。
