二十四節気 季節で感じる運命学《清明》染谷康宏

今回は「清明(せいめい)」です。

清明は、二十四節気の5番目で太陽黄経は15度です。太陽黄経は、太陽が天球上を通る経路(黄道)を等角に分割した座標のことで、春分点をゼロとして360度に分けたものになります。

今回の清明は、起点の春分よりも15度進んだと言うことになるのですが、春の始まりとなる立春から見ると75度も進んでいます。
確かに、次の穀雨で暦の上での春も終わり、夏に入るのですから当然かもしれません。ついこの間立春になったばかりなのに、季節の変化はは本当に早いです。

 

「清明」とは、すがすがしい風が吹き、清く明らかであることを表した「清浄明潔(せいじょうめいけつ)」という言葉から「清明」と言われたのです。つまり「万物ここに至って皆潔斎なり」であり、春先の清らかで生き生きした様子をそう言うのです。

ところでこの「清明」、中国では「清明節(チンミンジェ)」という祝日になっています。前後も休みとなるので3連休となるのですが、この期間はご先祖様のお墓参りに行き、ご加護と平安を祈る日とされているのです。中国では二十四節気の清明にお墓参りをするのが伝統的な習慣なのです。この風習は漢の時代に始まったと言いますから歴史が長いです。

日本でのお墓参りは、亡くなられた方の命日やお盆・そしてお彼岸にする人が多いと思います。彼岸は「彼岸会(ひがんえ)」というのが正式ですが、涅槃の世界あるいは悟りの境地を表していて、彼岸へ渡れるよう仏道修行をする期間とされています。これが先祖供養と合わさり、独自の風習になりました。

またお盆は、盂蘭盆会(うらぼんえ) といいますが、お釈迦様の弟子である目連の故事に始まる行事です。

中国の清明節は、日本のお彼岸やお盆とは少し味合いが違っています。ご先祖様のお墓をきれいに掃除して、お参りをするという意味は日本と変わらないのですが、この「清明」の時期に先祖参りをするというのがミソなのです。それは清明を過ぎると雨が降る時期になり、草が伸び放題になってしまうのを避けるという事から墓掃除を行うという、実務的な意味合いもあるようです。

中国人は、「生者に仕えるごとく、死者にも仕える」という考え方があり、墓を先祖の住む家と見立てて、墓をきれいにします。草を刈り、崩れた土は盛り土し、壊れていれば直すのです。もしもお墓をきれいにしないと、その家は子孫がいなくなったと見做され非難されるので、どの家も一生懸命に掃除を行います。それゆえ清明節を掃墓節(そうぼせつ)と呼ぶこともありますし、墓参と同時に郊外を散策することもある事から踏青節(とうせいせつ)と呼ぶこともあるのです。

現代中国は、墓地不足であるらしいのです。国土の広い中国なのに、不思議に思うのですが、14億人の人口を抱え、65歳以上の人口が1億5003万人という、日本の総人口より多いという数字を見ると、成程とも思うのです。そのため、毛沢東の時代には、土葬よりも場所をとらないという理由で国策として火葬に切り替えたそうです。それでも不足するので、最近では海洋葬や芝生葬、樹木葬などに力を入れているそうです。

つい先日、穀雨の時期に中国を訪ねたのですが、日本とはずいぶん違う風景がありました。

日本の墓のように生花が飾られているのではなく、派手なお飾りが置かれていました。それにお墓は山の中やがけ地、あるいは農地の傍などぽつりぽつりと立っているケースを多く見ました。日本のようなお寺にまとまってある風景はまったく見かけませんでした。民族が何度も入れ替わるような国では、一か所で長く墓を守って行くことが難しかったからかもしれません。あるいは、日本の檀家制度のようなものがないのかもしれませんね。

いずれにしても、中国では基本的には清明節か重陽節(ちょうようせつ)にお墓参りをするという事は、実際この目で確認することができたのは貴重な体験でした。

日本では沖縄地域で、清明のこの日を「清明(しーみー)」といって墓参りをする習慣があります。これは中国の清明節が18世紀ころに伝わったものです。墓前で食事をいただいたりして親族の親睦の場になっているそうです。実際沖縄のお墓を見てみますと、大きく立派なことに驚きますよね。今回清明節を勉強してみて、あの時の疑問が融けました。

二十四節気を勉強する機会がなければ、こうした疑問を解決することはできなかったでしょう。中国や日本では、人々の暮らしの中に深く根付いている文化なのだと改めて感じました。

 

暦便覧では

暦便覧では、清明を「万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれるなり」と記しています。この意味は「全ての草木が一斉に芽吹きはじめ、季節は清々しくなり、この芽は一体何の草木のものか分かる」と言うことです。

草木の芽吹きを「萌える」と言いますが、漢字の成り立ちから言うと草冠に明るいと書きます。陽光が射し、植物が芽を伸ばす様子が読み取れるような文字です。

3月の寒さは去り、とても過ごしやすい気候になります。外に出て新鮮な空気を胸いっぱい吸ってみましょう。鯉のぼりが緑風をおなか一杯吸い込み元気よく泳ぐ姿を、きっとどこかで見ることができるでしょう。