小寒について、暦便覧を見ますと「冬至より一陽気起こる故に陰気に逆らふ故、益々冷える也」と説明しています。つまり、意味としては、冬至を過ぎて陽の気が起こり、陰の気に逆らうように季節が移っていくのが小寒なのだと言っているようです。
また、小寒になって益々冷えるとも言っています。
冬至は、一年のうちで一番昼間の時間が短く陰の気が極まる節気でしたが、小寒は陽の気が一日また一日と強くなっていく第一歩目の節気なのです。気温の変化にはタイムラグがあると誰もが知っている昨今ですが、昔の人々も小寒になって日照時間がすこしずつ伸びても、実際に気温が上がってくるのは、今しばらく先になる事を体験的に知っていたのでしょう。それ故、これからも「益々冷える也」と言ったのでしょう。
冬至より一陽気起こる故に陰気に逆らふ故、益々冷える也
これは、人生哲学においても活用できる考え方です。株価指数においても、どん底に行き、ここが底かと思い、持ち直すかと思うと更に冷え込むという現象が良く見られます。二十四節気の流れをみながら、冬至は過ぎたが、その後来るのは小寒であり、そして次は大寒が来るか…と思って戴くと、捉え方も違ってくるかと思うのです。
私は株式には詳しくありませんが、人間の行っている経済活動の変動値であり、人間の活動は天地人という3つの枠で捉えた暦法的な考え方は大いなる参考になるのではないかと思うのです。
寒仕込み
暦を学ぶ者にとっての「寒」は、二十四節気の小寒や大寒、あるいは寒の入りから寒明けまでの約30日間をイメージしてしまいますが、通常は、皮膚感覚で捉える「寒さ」を寒さと捉えます。また、お酒を召し上がる方にとっては、「寒仕込み」などという言葉を思い浮かべるのかもしれません。味噌や醤油などの「寒仕込み」も、おいしそうな響きを持っています。気温が低く、人の活動も抑えられますが、雑菌も活動しづらく長期間仕込む必要のあるものには打ってつけの季節でもあるのです。そう考えると人材も、寒い方があちらこちらに遊びに行こうとする活動が鈍りますので、しっかりと仕込めるかもしれません。
寒暑という文字
「寒」という漢字を調べてみますと、寒さに対する人の暮らしが見えてきます。ここでは、指先でポンと一押しすれば部屋の隅々まで温かくなる現代人の姿ではなく、暖を取ることさえ容易ではない昔の人々の暮らしをイメージしてみてください。漢字の成り立ちとしては、二文字以上の漢字が組み合わさってできた会意文字になっています。つまり「家」と「枯草」と「氷」を表す象形で構成されているのが「寒」という感じです。それでは、少し分解しながら詳しく見て行きましょう。
文字の頭には、ウ冠があります。ウ冠は、家を表しています。ウ冠の下には、枯草を表す象形が入り、下には氷を表す点々があります。元々の古い漢字には、枯草の中に人を意味する象形が入っていたのですが、現在の漢字に人の姿を見つけることができません。
つまり「寒」という字は、家の中に枯草や藁を敷き詰めて、その中で寒さをしのごうとしている人の姿を現したものだという事がわかるのです。下にある点々は、氷だとお話ししましたが、冬という字の下にも点々が付いていて同じ意味なのです。ちなみに水の左上に点が付くと、「氷(こおり)」となります。「冷たい」も点が二つ、「凍る」も同じです。
それでは、「暑」の漢字の成り立ちについても調べてみますと、者とは、多くの物がひとつの所に集中するというイメージ記号であるため、暑は日光の熱が集中する状況を意味しているそうです。漢字は映像であるとはよく言ったもので、想像力の源泉であると思うのです。
今日という日も、2019年1月9日というよりも、戊戌年の乙丑月の丙午日 ここに漢字文化により作られた干支暦学の素晴らしさを感じます。