王陽明の弟子の孟源は、
「自分はまわりよりイケているんじゃないか」という自負があり、
どうしても自分のやっていることを自慢げに言う癖があった。
師匠である、王陽明は何度も諫めたが、
そんな時孟源は、
「先生、そんなこと言うって事は、
僕のSNSに注目してくれているんじゃないですかぁ」
と嬉しそうに言う。
そこで王陽明が述べたのが次の言葉。
自ら是として人を見下す、
此は是れ汝が一生の大病根である。
(伝習録 陸澄所録)
お前は生まれが良いから、
どうしても人を見下す癖がある。
この癖は、自分が生涯付き合わなければならない
病気だと思いなさい。
狭い庭に大きな樹木が植えてある状態を
想像してごらん。
土の栄養分も、恵みの雨も、
すべてこの大樹に吸い取られてしまう。
そのため、どのような苗を植え、種を蒔いても、
大樹に栄養を吸い取られてしまい育たない。
大樹の葉は繁っているようにみえるが、
狭い土地に植えられているため、
根は根詰まりし、少しずつ弱まっていく。
風通しも悪く、光の当たらないその庭を
人は居心地が良いと思うだろうか。
恐らく、多くの人がその状況を
変えたいと思うのではないか。
それではどうすれば、
その空間が生かされるかというと、
細い根すら残さぬレベルに大樹を抜き去り、
土を新たに耕し、様々な植物を植えることだ。
そうすることで、光が入り、風通しも良くなる。
最初は大樹がなくなったことに、
違和感を覚えるかもしれないが、
すぐに人々は慣れ、新しい環境を喜び、
様々な植物を育てることに未来を見出す。
組織において、自分がいなければと思うのは
単なる「自分迷信」に過ぎない。
自分ばかりが出来ると思い、
全ての手柄を自分のものだと勘違いする人は、
この大樹のような存在だ。
一見すると、確かに立派に見えるだろう。
だが、それを支える組織は疲弊し、
そこに未来は見いだせない。
大樹が老木の場合は尚更だ。
その根が狭い土地を絡めとり、
その土地からは新たな人材、
可能性が育つことはないだろう。
解決法として、人々は当然の事ながら
大樹を伐採することしかないと思う。
しかし他に方法はないのだろうか。
狭い土地から根ごと丁寧に抜き、
広い世界に移植したらよいではないか。
しっかりとした樹木であれば、
広い大地の方が、
根をしっかりと張ることができるだろう。
しかし、
広い世界では、その大樹より立派な木は
いくらでもあり、誰も大樹を大樹だと思わない。
狭い庭でしか通用しない樹木であれば、
根を張れず立ち枯れてしまう。
それが自然の摂理だ。
上を目指して切磋琢磨しない限り、
自らの存在を誇示することは出来ない。
広い世界をみない限り、
己の事など分からないのだ。
佐藤一斎もこのようにもいっている。
言志録 183条
佐藤一斎事を処理するに理有りと雖も、而も一点の己れを便ずるもの、
挟みて其の内に在れば、則ち理に於て即ち一点の障碍を做して、理も亦暢びず。
どんなに自分の方に道理があっても、
そこに僅かでも自分の便宜を優先させる私心や
優越を誇る気持ちがあったなら、
相手は微妙にそれを感じるだろう。
すると、それが障害になり道理が通じず、
相手から納得してもらえないものである。
孟源のように、
相手を見下してしまう態度が
表に出てしまう人など、猶更のことである。
最後に、劉邦(宮城谷昌光著)文春文庫に、
良い文章があったので引用する。
2200年ほど前の、秦の始皇帝の死後、
秦王朝滅亡後の政権をめぐり、
項羽と劉邦との間で繰り広げられた争いは、
ご存知の方も多いかと思う。
劉邦は農家の三男。
歴史に登場したのが47歳。
それまでは知名度ゼロで、
亭長という田舎の駐在所の巡査長だった。
一方項羽は、184センチもの美丈夫の24歳。
楚の国の名将項燕将軍が祖父である、
名門一家の名家のプリンスだ。
オヤジ対若手の対決。
どちらが制したと思うか。
オヤジ劉邦が勝利し、漢王朝を築くのだが、
このような文章があったので、引用する。
以下、劉邦(宮城谷昌光著)文集文庫より引用
われは農民の子で良かった、とつくづくおもう。
そうではないか。
長男として生まれたわけでもない
われの両手には、なにもなかった。が、項羽はそうではなかった。
名門意識をにぎったまま成長した。
いまもかれの片手には
それがにぎられているのだろう。ほかの手には何があるのか、
あるいは、なにもないのか、
それはわからない。とにかくにぎっているものを棄てないかぎり、
あらたなものはつかめない。幸いなことに、われは両手が空いている
両手を突き出した劉邦は、
虚空を抱くように、両手を合わせた。
現在のような大転換期は、ゼロが強い。
成功体験もゼロ
学歴もゼロ
しがらみもゼロ
両手が空いていないと
新しいものを掴むことができない。
両手を空けて、成功をつかみとれ!
一般社団法人数理暦学協会
山脇史端
下記サイトに要約文を掲載させて戴いております。