二十四節気 季節で感じる運命学《小雪》 染谷康宏

二十四節気 季節で感じる運命学、今回は「小雪(しょうせつ)」です。
小雪は、二十四節気の第20番目で、太陽黄経は240度になります。

2018年の期間は11月22日から12月6日までとなります。

二十四節気でいう小雪は、「こゆき」ではなく、「しょうせつ」と読みます。

しかし、気象用語としては小雪(こゆき)と読みます。気象庁のホームページを見ますと、「こゆき」は数時間降り続いても、1時間の降水量として1㎜に達しない雪であると書かれています。

では、「雪」はどのような状態になると降るのでしょうか。寒くなれば、雪が降るのは当たり前だと思っていませんか。確かに寒いというのは非常に重要な要素であることは間違いありません。しかし、それだけでは雪が降る条件としては足らないのです。

雪が降る条件

雪が降るには、いくつかの条件があります。気温が低いことに加えて、雲があるということが重要なのです。つまり空気の中に水分がないと雪は降らないと言う事になります。まあ、実際この二つは考えなくても、だれにでも想像はつきます。
しかし、その雪雲がどうしたらできるのかは、少し考えをめぐらさないと思いつきません。

では視点を変えて、冬になってたくさん雪が降るのは、どこなのか思い出してみましょう。最初に思い出すのは、日本海側の地域です。この地域は、冬になると中国やロシアのあるユーラシア大陸からとても冷たい季節風が吹きこんできます。冷たい風が吹いただけでは、雪雲はできないのですが、日本海を超えて来る時にたっぷりの水蒸気を吸い込んで日本列島にぶつかって、ここで雪雲ができるのです。そして上空の冷たい空気と一緒になることで、日本海側の各地域にたくさんの雪を降らせるのです。

一方関東地方などに降る雪は、これとは条件が違います。

もちろん気温が低いことは同じですが、水分を含んだ雲のでき方が違うのです。ユーラシア大陸からの冷たい空気と、南の方からやってくる低気圧(南岸低気圧)がぶつかって雪が降るのです。だから日本海側のような雪の降り方はせず、一過性の雪となる場合がほとんどなのです。

例として日本での降雪条件を挙げましたが、元々の二十四節気は古代中国の戦国時代(紀元前5世紀~紀元前221年)のころに考案されたもので、日本の気候風土とは違った観点で作られています。ですから、私たちが二十四節気を考えるときは、そうしたことを頭の隅に置いておかないと、意味が違ったものになってしまいますので、注意が必要でしょう。

 

「小雪」

小雪について、暦便覧では「冷ゆるがゆえに雨も雪と也て下るが故也」と説明しています。直訳すれば、寒くなるので雨も雪となって降ると言っている訳です。つまり冬の始まりに、少し降る雪を「小雪(しょうせつ)」と言っているということなのです。
暦(こよみ)の上では、立冬で冬シーズンに入っているのですが、今季は暖冬で本格的な冬はまだまだ遠く、スキー場も雪が降らず困っている姿がテレビニュースで映し出されています。当然のごとく人工降雪機がフル稼働しています。
今年の札幌市は、統計開始以来1890年(明治9年)と並んで最も遅い初雪の観測となったそうです。これも地球温暖化の影響なのでしょうか。将来は、二十四節気も徐々にずれいってしまうのではないかと心配してしまいます。

七十二候では
それでは、今回の「小雪」について、期間中の七十二候は次のとおりです。
始めに初候は、略本暦・宣命暦共に、虹蔵不見(にじ かくれて みえず)となっています。
次候は、略本暦では、朔風払葉(きたかぜ このはを はらう)となっており、宣命暦では、天気上昇地気下降(※天気上騰地気下降 と書こともあります)(てんき じょうとうし ちき かこうす)となっています。
最後に末候の略本暦では、橘始黄(たちばな はじめて きばむ)となっており、宣命暦では、閉塞而成冬(へいそくして ふゆをなす)となっています。

 

初候
それでは小雪の七十二候について、それぞれの候を見て行きましょう。
まず初候は、虹蔵不見(にじ かくれて みえず)となっており、略本暦と宣命暦ともに同じになっています。意味は、 虹を見かけなくなるということなのですが、七十二候には「虹」の入っている候がもう一つあるのです。それは「清明(せいめい)」の末候にあって、虹始見(にじはじめてあらわる)というものです。つまり清明と小雪は、ちょうど対の関係になっているのです。
清明は二十四節気の5番目で、おおよそ4月の上旬から中旬にかけての期間になるのですが、七十二候の「虹始見」から考えると、虹は4月上旬から見え始め、12月上旬のころには見えなくなる事を示している訳です。それでは11月下旬から4月までの冬季には虹が見えないのかと言えば、そうではありません。もちろん冬であっても虹は見られます。ただ夕立の多い夏などに比べたら、冬の間は空気も乾燥し雨も少なくなるので非常に見えづらいと言うことは確かでしょう。

さて皆さん、話は急に変わりますですが、虹の色は何色あるでしょうか。多くの人は、7色だと即答するのではないでしょうか。

子供のころ、理科室にあったプリズムが作り出す虹色に心を躍らせたことはありませんか。またある時には、夏の夕立の中で色のはっきりとした大きな虹に感動したことはないでしょうか。そういう時、多くの人は虹の中に7つの色を数えたのではないでしょうか。
でも、いつから7色になったのでしょうか、虹の暦史をちょっと覗いて見ましょう。
まず17世紀のイギリスに遡ります。当時のイギリスでは、虹の基本色は赤・黄・緑・青・紫の5色と考えられていました。しかしニュートンは、この5色に橙色と藍色を加えて7色としたのです。それらを学校で教えられた私たちは、皆一様に虹は7色と考えるのです。
ニュートンが7色としたのは、この数字の7が宗教的な特別な意味を持つ聖数だからで、特に7は天地創造などにみられる最も神聖な数とされていたからだと言われています。

ニュートンの時代よりももっと古い時代から7という数は注目されていました。つまり、数理暦学の講座でも学ぶ5惑星(木・火・土・金・水)に太陽と月を加えて7つの天体を意味する数字として神聖視したということではないかと言われているのです。古い時代から5や7という数字には特別な意味が含まれていて、様々な事柄が意味づけされていたという事なのですね。
また、以前「秋分」の次候ところで虫について書いたことがあるのですが、「虹」にも虫偏が使われています。これは、虹が竜の一種だとみられていたことや雨を降らせる強大な蛇だといわれたことから、虫の字が使われたようです。現代では、虹が光の屈折によって見えることは誰もが知っていることですが、昔は不思議な現象だったので竜が持ち出されたのでしょうね。

 

次候

いささか虹の話が長くなってしまいましたので、次候に移りましょう。
次候の略本暦は、朔風払葉(きたかぜ このはを はらう)となっています。 意味は、「北風が木の葉を払い除ける」ということで特別な説明は必要ないでしょう。紅葉も終わりに近づき、木の葉も日に日に数を減らし地面に落ちた葉は風に飛ばされて行きます。
ただ「朔風(さくふう)」という言葉は、普段聞きなれない言葉ですから若干の説明が必要でしょう。この朔風(さくふう)というのは、意味の説明部分にも書いたように「北風」ということですが、そもそも「朔」は北方を意味している言葉です。また新月、すなわち月と太陽が同じ方向にあって月が全く見えない日を朔とも言います。それ故、朔日は「ついたち」と読まれるのです。

木枯らしが吹くこの季節、落ち葉を掃き集めるのも大変な仕事です。一昔前なら、落ち葉もたい肥にしたり焚火にしたりしたものですが、近ごろは可燃ごみに出さなければいけなくなってしまいました。真っ赤に染まった桜やドウダンツツジの葉を見てきれいだと思う心の余裕もなく、邪魔者扱いされる枯れ葉たちも、ずいぶん可哀そうです。季節の移ろいも、風情がなくなりました。

次候の宣命暦は、天気上騰地気下降(てんき じょうとうし ちき かこうす)ですが、これは、天地の暑さや寒さが逆さまになり、日ごと寒さが厳しさを増していくということを表しています。ここで言う天気とは、毎日テレビで見ている天気予報の天気のことではなく、目に見えない自然エネルギーを表す天の気と理解するとわかりやすいです。具体的に言えば太陽の運行や月、惑星など動きのことだとも言えます。そして地気は人が暮らす地球あるいは大地の気だと。つまりは、小雪に入ると太陽の活動は弱くなり、地球の活動も静まって冬が一層深まっていくということなのだと私は理解しています。

 

末候

最後に末候です。略本暦は、橘始黄(たちばな はじめて きばむ)となります。

橘とは、一般的にはみかんを表していますが、正確には日本固有の柑橘(かんきつ)であるヤマトタチバナのことを指しています。
橘は、常緑の葉が永遠の命の象徴とされて縁起の良い樹として好まれ、不老不死の実としても珍重されたのです。実際には酸っぱくて、食用にはあまり向いていませんが、京都御所の紫宸殿には右近の橘として植えられておりますし、ひな壇かざりにもミニチュアの橘が飾られています。ちょうどこの時期、我が家のみかんも黄色く色づいてようやく食べられるようになり、略本暦にあるこの候がぴったりだと実感しています。

最後に末候の宣命暦は、閉塞而成冬(へいそくして ふゆをなす)です。天地の気が塞がって冬となるという意味です。次の二十四節季の「大雪」の初候の略本暦には、閉塞成冬(そらさむく ふゆとなる)というのがあって、意味は閉塞而成冬と同じものが出てきます。
内容が同じで時期をずらして、略本暦または宣命暦に再び同じ文言が出現することは、しばしばあります。これは、中国の気候が、海洋性気候の日本とずれていることに起因するのではないかと想像するのですが、改めて地球の大きさを感じます。

さて、冬は立冬・小雪・大雪・冬至・小寒・大寒と続きます。小雪は寒くなって雨が雪に変わる季節ですが、12月7日からは大雪へと移り変わります。
雪がいよいよ降り積もってくる季節の到来です。

冬対策を万全に。

 

染谷康宏