誉田先生がマクロビオティックについてお話し下さいました。
マクロビオティックは昭和初期の戦前に作られた食事療法です。九星気学・算命学と同じく、日本人の編纂による文化です。
日本の文化は、中国を土台としていますが、そのままを使うのではなく、和の国にあった実践的なものに編纂してとりいれております。和の文化にアレンジしてしまうというこの独特の能力は、極東の国ならでは特長かも知れません。
薬膳とマクロビの違いについて
まず共通点は、両方とも陰陽説が原理になります。
大きな違いは、昭和時代の日本人が提唱した食事療法と、古代中国より続く食事療法といったところでしょうか?
薬膳は、古代中国より続く中医学理論のもとに、その人の体質を考え、バランスを整える食事療法です。 中医学の基礎理論の経典は、今から2000年以上前に中国で誕生した『黄帝内経素問』です。
東洋医学の祖、黄帝により、「なぜ病気になるのか、どの季節にはどんな病気があるのか、どこが病むとどんな症状が出るか」といったことが記されています。
この『黄帝内経素問』は、飛鳥から奈良時代に日本に伝わり、我が国の漢方・鍼灸治療理論の基礎となりました。
その後、今から1800年位前に後漢で《傷寒論》(しょうかいろん)という書籍が書かれます。
これは、「どういう場合に、どう漢方薬を用いるのか」という理論をまとめたもので、現在の日本の漢方薬の使い方の主流になっている考え方です。
東洋医学の基本である、「気血水」という考え方を取り入れたのも、この《傷寒論》です。葛根湯なども登場しています。
そして、今から600年~800年前の12世紀~14世紀、に、漢方薬の運用に大きな変革期が訪れます。
生活も豊かになり、それまでの処方で治癒できない病が現れたのです。
このときに登場したのが、後に《金元四大家》と呼ばれる4人の優秀な医師達です。
体力をつけることで知られる補中益気湯などはこの時登場した新たな処方です。
戦国時代の日本で広まり人気になったのは、この時の漢方理論です。
そのため、この理論より前の傷寒論の時代のものは、「古方」と呼ばれるようになります。
江戸時代の書籍を読んでいると、古方という言葉が良く出てきます。
この古方とは、《金元四大家》より古い時代の漢方療法という意味になります。
中国では、その後、17世紀に《温病論》(おんびょうろん)という新しい理論が登場しますが、日本は鎖国だったので近年まで伝わりませんでした。
日本漢方と中医学の違いのひとつはここにあるようです。戦後、中医学の一分野として紹介されています。
このように、永い歴史のある漢方理論による食事療法全体を薬膳といいます。
正確には、生薬と食材で作られる食事であり、生薬がなく食材だけで作られる食事を食療と言いますが、薬と食品の線引きは正確ではないため、薬膳と食療の線引きは非常に曖昧です。
日本書記にも、「食(くらいもの)は天下(あめのした)の本なり。黄金万貫(よろずはかり)ありとも、飢(いひうゑ)を癒すべからず」と書いてあり、江戸時代の本草学者でもあり儒学者の貝原益軒も「養生訓」に、「人の身は元気を天地にうけて生ずれ共、飲食の養なければ、元気をうゑて命をたもちがたし。元気は生命の本也。飲食は生命の養也」と、食が根本であると説いているように、我が国でも、食養という考え方は古来からあったのです。
さて、何となく分かりましたか?
それでは、栄養士でもあり、薬膳コーディネイターの岡田雫先生に、この季節の薬膳についてお話し戴きましょう。
小満の薬膳レシピ (岡田雫)
先日の染谷先生のブログで「立夏は夏の始まり」というお話がありましたが、いよいよ来週21日からは「小満」となります。早いものですね。
薬膳は、環境(季節)とその人の体質に合わせて行います。 ここでは個人の体質についてはお話しできないので、季節の取り込み方を中心のお話しして参ります。
「小満」とはどういう季節かといいますと、太陽の力が強くなり、エネルギーが満ちていき、草木が天地に茂り、気温も上がってくる季節です。
この季節は、七十二侯で示すと、次の3つの期間で構成されています。
「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」
蚕が桑の葉をいっぱい食べて育つ季節です。
蚕は絹を作りだす昆虫で、養蚕は既に古事記にも記述のあるわが国の大切な重要な産業です。古代・中世では年貢の代わりにも用いられました。農家にとっても大切な収入源であり、地方によっては「おカイコ様」と、半ば神聖視した呼び方が残っています。そのような恵みの蚕が育つ季節です。
「紅花栄(べにばなさかう)」
紅花は、口紅などの紅を作る植物です。紅花油も有名ですよね。
この花が一面に咲き誇ります。
「麦秋至(むぎのときいたる)」
麦秋とは、秋に撒いた麦のことで、丁度この季節が麦秋の収穫時です。
絹と紅という女性にとって大切な資源、そして麦の収穫という、何か華やかな季節を感じます。
小満の陰陽五行
この季節を陰陽五行で分類すると、
… 夏… 火… 紅組… 心… 小腸… 舌… 汗… 脈… 顔面… 苦味… 喜… となります。
何の事か分からないので、少しずつ説明して参ります。
夏は一年中で一番暑い季節です。
陰陽五行論でいうと、太陽がエネルギーの強い日なので、火の季節という事になります。
色で言えば、紅・朱の色です。
先程紅花が一面に咲きと、「紅花栄(べにばなさかう)」 という言葉を用いましたが、まさに紅の季節です。
また夏という季節は、同時に雨も多い季節です。昼夜を問わずムシムシした日が続くため、疫病も増えて行く季節になります。
自然界の陽気も一番旺盛な時期になりますので、身体を保養することが大切です。
又、五臓六法では、心の臓になります。
「心」は人体の生命活動の重要な部分であり、五臓の中で中心的な存在です。
別名「君主の官」とも言われています。 血脈を管理し、神志(精神)を管理します。
働きが低下すると、血流が滞り、顔色が悪くなり、舌や唇が青紫になり、刺痛、動悸が現れます。 また、感情、思考、意識、判断など、全ての精神的な働きに関与するため、苛立ちや情緒不安定、不眠や多夢、記憶力の低下も引き起こします。
この季節を上手に乗り切るポイントは… 太陽や血液の燃えるような赤(朱・紅)を取り入れることです。
二十四節気という考え方は、中国大陸の内陸部で作られた考え方です。
特に、長江流域は中国のボイラーといわれるほどの酷暑が続きます。
小満の頃はまだ夏の始まりなので、敢えて夏の気(陽気)をこの季節にとりいれて、夏に対処できる身体を準備する必要があるのです。
夏は、立夏・小満・芒種・夏至・小暑・大暑の六季で構成されています。
小満は、まだ初夏であり、その先に芒種という梅雨の季節に入り、夏本番となります。
夏まっさかりの「夏至」になると、暑さ対策が中心になります。体内の熱を摂ることを徹底する薬膳になりますが、小満の季節は上手に陽気をとりいれながら、夏に備えた体作りをする季節です。
そのため、陽の気ですから、赤い食べ物や赤い持ち物など、色のパワーを利用しても良いでしょう。
また心の生理機能が「喜」の感情と関係しているため、喜べば気が和み、気持ちがゆったりとして、気がスムーズに流れると言われています。
しかし、喜びも過ぎれば心神を傷つけます。
この季節は開放感もあり、テンションが上がりやすいので、注意しましょう。
小満の季節のオススメ食材
収斂作用のあるもの(汗のかきすぎを防ぐもの)… 山査子、梅干、レモン、酢
暑邪(体内の余分な熱を冷ますもの)… トマト、茄子、胡瓜、冬瓜、西瓜…
苦味(暑さから心身を守るもの)… 苦瓜、茗荷、辣韮、菊花…
但し、現代社会においては、ひとつ注意して頂きたいことがあります。 熱中症での事故が多くなっている昨今、冷房のきいた部屋で過ごすことが当たり前となっております。 夏なのに冷え性なんて方も多いのではないでしょうか?
本来は、上記のような食材を摂り、冷房に頼らず体温を整えることが理想ですが、なかなかそうはいきません。
それで、今の生活にあった薬膳レシピは、体を温め、冷えを改善する食材も同時に取り入れることです。
両方の食材を上手く組み合わせることで、中庸(バランス)を保ってください。
辛味… (体を温め、血行を促すもの)… 紅花、唐辛子、紫蘇、パクチー(香菜)、玉葱、ピーマン、生姜、葱、大蒜、山椒
オリジナル薬膳茶「真朱(まそほ)茶」♪
*真朱(まそほ)とは、伝統色の名前で、少し黒みのある鈍い赤色のことです。
「朱」は硫化水銀鉱物から作られ「朱丹」 を元にした天然の赤色顔料で、我が国では縄文時代から発掘されており「万葉集」にもその名が紹介されています。
ハイビスカスの花(仏桑花)1個、紅棗1個、クランベリー(蔓苔桃)5粒、枸杞子3粒、苺1個、紅花1つまみ、山査子1片、陳皮1片、
<飾り>玫瑰花1個、茉莉花2個
写真をみて戴くとお分かりの通り、とても綺麗な赤い色の薬膳茶です。 お茶の色から「真朱茶」と名付けました。
ハイビスカスの花はビタミンCやカリウムが豊富に含まれているので、美肌効果や利尿作用があります。
クランベリーはアントシアニンが豊富に含まれているため、目の疲れに効果的です。
苦味成分のフラボノイドは抗酸化作用があります。 見た目も美しく、甘酸っぱくてとても飲みやすいですよ♪
色のパワーを感じながら、夏モードに身体を切り替えていきましょう。