EUがギリシャを絶対に切り捨てられない理由

人工知能には偏見や私利私欲がないため、今後、政治の舞台で公正な意思決定を下す用途で使われ始めるだろうという予言があります。(Forbes Japan記事参照)

果たして、AIは理想の国家、ユートピアを創造できるのでしょうか?

プラトンは、人間は、《自分=肉体+財産+地位》だと捉え、これに恵まれている人が幸福だと思い込むため、どうしてもポピュラリズムに陥りやすいと説いています。

AIには肉体も財産も地位もありません。…となると、プラトン的にいうとイデア界となりますが、果たして、AIはイデアか否か。

この問題は、AIが黎明期の今だからこそ、しっかりと考えなければならない問題かと思います。

 

AIはイデアか。

プラトンは、イデアとは魂であり、魂とは、3つの要素(理性・気概・欲望)で構成されていると説きました。

これを、プラトンの魂の三分説と言います。

プラトンは魂の三分説を、馬車の例えで説明しています。

二頭の馬を、御者がコントロールしながら走っています。
1頭は、気概という名前の白い馬、もう1頭は欲望という名前の黒い馬です。
御者の名前が理性です。
気概とは、voluntarism。理想に向かって走っていく白馬です。頑張ろう!って励まさないと走りません。

欲望とは、emotionalism。感情の趣くまま走る黒馬です。ぐんぐん走るので、抑えつける必要があります。

この二頭を、理性  intellectualismという御者が、上手にコントロールしながら、目的地へと進むのです。

御者(理性)と二頭の馬(気概と欲望)には、それぞれ必要なものがあります。

御者(理性)に必要なものは、《知恵》です。

励まさないと立ち止まってしまう気概という白馬に必要なのは、《勇気》です。

暴走しようとする欲望という黒馬に必要なのは、《節制》です。

知恵、勇気、節制を、三元徳と言います。

 

三元徳

知恵と勇気と節制が、魂を高く保つには必要なもの。つまり、イデアを高く保つ為に必要なものが、この三元徳だとプラトンは説きました。

そう考えると、ITは知恵ですが、ITがAIとなり、人間に近づくためには、勇気と節制が必要になります。

この理論は、経営者へのアドバイスにも使えます。

理想の国家(会社)を作るには、プラトン風に言いますと、

王(社長)は、知恵の徳を習得し、理性を持って指導する。
官僚(経営陣)は、勇気の徳を持って、言うべき事をいう、やるべき事をやる。
生産者(社員)は情に流されずに、自分の欲望や感情を抑えることが出来れば、国家(会社)全体の秩序と調和が保たれて、理想国家が成立する!となります。

リーダーが社員に対して必要な事は、欲望とそれに対するコントロール力です。
お金が欲しい、出世したいという欲望がないと、前に走りません。馬が止まってしまってもいけないのです。
上手にコントロールすることが大切になります。

管理職に対して必要なのは、夢とロマンを抱きながら、勇気を持って前に進むビジョン。
また、方向性が間違っていると思ったら勇気を持って意見をする位の気概が出せる雰囲気作りといった所でしょうか。

つまり、AI開発において欲望を抑える機能を搭載すると共に、この気概をプログラミングしておかないと、制御不能になる…と、プラトンはアドバイスしてくれているのだと思います。

社長に必要なのは、会社の目的というビジョンを明らかにすること。そして情報と知恵です。
それがあれば、管理職と社員を上手に御することが出来ます。
感情的になってはならず、理性的に行う必要があり、それに必要なのが知恵なのです。

プラトンは、名家の御曹司で、政治家になるべき人だったので、理想の国家のあり方、つまり組織論を色々な角度から考察しています。

後に、知恵(Wisdom)・勇気(courage)・節制(temperance)に、正義( justice)が付け加えられて、四元徳に発展します。

そして更に、キリスト教においては、この四元徳をベースに、信仰(faith)・希望(hope)・愛(love)の3つが加えられて、七元徳が誕生します。

個人的な意見ですが、増えれば増える程観念的になるため、プラトンの三元徳が一番シンプルで人間の真髄ではないかと思うのです。

 

EUがギリシャを絶対に切り捨てられない理由

プラトンは、王(社長・御者)が、理性を保つ為に学ぶべき知恵とは、幾何学・数学・天文学 そして音楽だと言っています。

今風でいうと、理系の知識(アルゴリズム)+それをリズムよく伝える発信力といった所でしょうか?

AIはアルゴリズム系は大の得意、あとはそのデータを人間のこころのリズム(波長)に合わせて伝え始めたら、恐ろしいものになるかも知れません。

プラトンがアテネ郊外に作った学校「アカデメイア」は、アカデミーの語源です。

プラトンはその入り口に、「幾何学を知らぬ者はくぐるべからず」という額を掲げていた位、理系の学問を重視しました。

古代ギリシャの知識を正しく引き継ぎ、発展させていったのはアラビア世界で、ヨーロッパ人がその偉大さに気づくのは11世頃になります。

中世になると、キリスト教の教理を、プラトン・アリストテレスの哲学によって、合理化するスコラ哲学が誕生しました。

それにより、西洋の古典研究は、キリスト教(ヘブライズム)と、プラトン・アリストテレスのギリシャ哲学(ヘレニズム)が源泉となるのです。

ギリシャの経済破綻が問題になっていますが、ヨーロッパ諸国が古代ギリシャを自分たちの文明の根源とする以上、ギリシャをEUから追放することは出来ません。

プラトンは、2500年以上経った今でも、ギリシャの人達を救っているようです。

 

アリストテレスとヘレニズム

17歳でプラトンのアカデメイアに入り、プラトンが死去するまでの20年間、師匠を支えたのがアリストテレスです。

アリストテレスは、アレキサンダー大王の家庭教師としても有名です。
教え子アレキサンダー大王は、ギリシャを統一し、エジプト、メソポタミア、ペルシャからインダス川までを含む地域を征服し、それによりヘレニズム文化の時代が始まります。

ちなみに、ヘレニズムとはヘレネス(ギリシャ人)の文化、ギリシャ風の文化のことです。

ヘレニズム文化はインドにも大いなる影響をもたらし、仏像作りの技術が伝承され、ガンダーラ美術が誕生します。

私達の国にある仏様も、ギリシャ彫刻より影響を受けて誕生したのです。

繋がりましたね、ヘレニズムと私達!