前回に引き続き経営者の側近(重職)の心得を、
佐藤一斎著 重職心得箇条から学んでいく。
第1回目の投稿は下記を参照
東洋古典運命学 《経営者を支える者の心得①》
モチベーションアップの環境作り
今回の心得は、部下の取扱い方がテーマだ。
そのため、リーダーが管理職を
活用する際にも使える内容である。
重職心得箇条
第2条大臣の心得は、先づ
諸有司の了簡を尽くさしめて、
是れを公平に裁決する所其の職なるべし。
もし有司の了簡より一層能き了簡有りとも、
さして害なき事は、
有司の議を用いるにしかず。
有司を引き立て、
気乗り能き様に駆使する事、
要務にて候。又些少の過失に目つきて、
人を容れ用いる事ならねば、
取るべき人は
一人も無き之れ様になるべし。
功を以て過を補はしむる事可也。又堅才と云ふ程のものは無くても、
其の藩だけの相応のものは有るべし。
人々に択り嫌いなく、
愛憎の私心を去って用ゆべし。自分流儀のものを取り計るは、
水へ水をさす類にて、
塩梅を調和するに非ず。平生嫌ひな人を能く用いると
云ふ事こそ手際なり。
此の工夫あるべし。
上司は、部下に思う存分意見を言わせ、
好き嫌いの感情を抑えた、
ニュートラルな立場で、
冷静に採決する事が仕事である。
まず重要なのは、
部下が思いっきり意見を言い合える
環境づくりである。
環境づくりにおいては、
次の事に留意すべきだ。
まず大切な事は、
例え自分が同じ案であっても、
部下の意見として扱うべきである。
彼らより良い案があっても、
全体に大きな影響を
及ばさないレベルであれば、
部下の考えをまずは採用する。
否定を繰り返すと
彼らのモチベーションは
下がってしまうからだ。
モチベーションを高め、
気持ちよく、積極的に
仕事に取り組むようにする。
それから上手に調整する。
上司が部下の意見を
マウンティングしたり、
部下の意見を否定ばかりしていると、
部下はやる気を
なくしてしまうだろう。
また、小さな失敗を気にして、
自分でなければ無理だと、
彼らの仕事の質を受け入れることが
出来ない限り、
使える人材など誰もいなくなり、
自分一人で仕事を抱え込んでしまい、
本来やるべき仕事が疎かになり、
組織の成長は止まってしまう。
このような状態で、
身動きとれなくなってしまう
管理職は多いだろう。
それを「自縛」という。
自分だけしかいないという、
狭い了見の心理状態だ。
そのような状況に
陥らないようにするには、
部下がどのような役割をしているのか、
どのような功績をあげているのか。
一人ひとりの功績を明確にして、
自分自身を納得させることだ。
功績がない場合、
功績を積み上げられるように、
出来ることからやらせる指導が大切だ。
これは、
部下に自信を持たせると同時に、
上司が自分を納得させるためにも、
必要な作業である。
部下への再認識
とりたてて凄いと思わせる人材など、
わが社にはいないと思う人もいるだろう。
しかし、良く見ると、
それ相応の者は必ずいるのだが、
好き嫌いが邪魔をして、
観ようとしていない場合が多い。
自分が好きな人物には、大いに期待をする。
そのため、その期待に応えられないと、
大した人物でないと判断してしまう。
逆に、嫌いな人物は、
しっかり観ようとすらしない。
そのため、功績を立てても
無意識にスルーしてしまうのだ。
自分のバイアスで人材を観る限り、
花形プロジェクトに入るメンバーは、
リーダーが好きな人ばかり。
故に、企画も、実行も、
従来の枠から出られない。
出世しなければ上司になれず、
自分が優秀だから
出世したという自負がある。
そのため、
自分と同じ感覚の持ち主、
同じレベルの大学の出身者、
同じ行動をする人こそが、
優秀な人材だと思ってしまう。
これを自分勝手な先入観という。
その陰で、
同じ業務ばかりをやらされ
毎日に行き詰まった、
優秀な人材が離職している。
管理職に立つ者は、
好き嫌いの概念を意識から外して、
人材を観察し、登用すべきである。
しかし、人間には情があるため、
これが中々難しい。
自分が可愛いと思う情
自分の同類が可愛いと思う情だ。
この情を乗り越えるには、
人間力を高めるしかない。
故に、
マインドリセット、
東洋古典の学びがあり、
座禅を組んだり、
マインドフルネスが人気なのだ。
また、
トップに近づくほど、
大局を決める重要な決定が求められる。
その不安と孤独感を埋めるために、
自分に同調してくれる人、
自分のやり方を
支持してくれる部下を
無意識に集めてしまう。
嫌いな人、
自分の意見に異を唱える人を、
無意識に遠ざけ、
仲良しグループ、派閥を創り出す。
しかし、そのような「仲良し組織」は、
単に自分の意見を薄めるに過ぎず、
事業にインパクトや
味わいを加えることなど出来ない。
インパクトのない
お馴染みのメンバーで創りだす事業は、
面白さもかけ、
そこからイノベーションは生まれない。
お汁粉で例えると、
砂糖や水を加えるだけで、
塩を加えない
甘いだけの汁粉である。
和羹塩梅(わこうあんばい)
主君を補佐して国を適切に治める、
有能な宰相・大臣を例えた四文字熟語
「和羹」はいろいろな材料・調味料を
まぜ合わせ、味を調和させて作った
吸い物を意味する。
「塩梅」とは、塩と調味に用いる梅酢のこと。
料理は、塩と、酸味の梅酢とを程よく加えて
味つけするものであることから、
上手に手を加えて、
国をよいものに仕上げる宰相を示す言葉だ。
殷の武帝は、
宰相、傅説に次のような言葉を述べている。
『 爾惟れ朕 志こ訓へよ。
若酒醴を作らば、爾は惟れ麴蘖。
若和羹を作らば、爾は惟鹽梅。』(書経)
私(君主・経営者)が酒を求める時は、
お前(宰相・重役)は、麹になれ。風味の良い汁物を求める時は、
塩梅になれ。
リーダーに気分良く仕事をさせたければ、
補佐する者の役割は、
リーダーの意見が違うと思っても、
いったん受け入れ、
その中から、
活用出来そうな要素を抽出し、
それを深め、良いものに変えて、
人々が喜んで受け入れるカタチにする事。
他が中々真似できない
創意工夫のある事業にしたければ、
反対意見や批判的観点を上手に取り込み、
全体のバランスを整えながら、
味わい深いものにせよ。
平生嫌ひな人を能く用いると云ふ事こそ手際なり。
苦手な人を上手に活用することこそが、
経営者の手腕。
美味しい料理は
人を酔わせることはないけれど、
酔いから醒める事もない。
山脇史端
一般社団法人数理暦学協会
下記サイトに要約文を掲載させて戴いております。
当協会はアジアビジネスコンサルタントとして
暦学を提唱させて戴いております。
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[…] 出典:東洋古典運命学「経営者を支える者の心得② 酒と料理の組織論」 この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。 […]