日本人がスピード感がない理由
佐藤一斎の言志後録にこのような文章がある。
第45条 難事に処する道
凡そ大硬事に遇わば、
急心もて剖決するを消いざれ。
須らく姑く之を舎くべし。
一夜を宿し、枕上に於いて
粗(ほぼ)商量すること一半にして、
思いを齎(もたら)して寝ね、
翌旦の清明なる時に及んで、続きて之を思惟すれば、
則ち必ず恍然として、一条路を見、就即ち義理自然に湊泊せん。
然る後に徐(おもむろ)に之を区処せば、大概錯誤を致さず。
大きな困難な事件に遭遇した時、
急に解決しようとしてはいけない。
一晩持ち越すこと良いだろう。
枕元で半分位考え、考えながら寝る。
そして翌朝、心が清く明らかになった時、
引続いてこれを思案すれば、
必ずおぼろげながらも
一条の活路が見えて来る。
そうなると、
その難問題の義理(筋道)が
心の中に集って来る。
ゆっくりと、
このようにして、
一つ一つ処理して行けば、
大概は間違うことがない。
一晩寝かせろ!
つまり、「一晩寝かせろ!」ということ。
日本は発酵文化なので、
「寝かせる」ことが好き。
「果報は寝て待て」のように、
「寝かしている間」に
エネルギーをインプット、
熟成させると、
芳醇な良い物へと変化していく。
正にその通り!
興奮した感情的なアイデアより
一晩寝かせた方が、冷静になり
実行可能な路線で、
より良いアイデアへと落ち着くから、
一晩寝かせてから行動しろという考えだ。
正にその通り!
メールもその場の勢いで出してしまって、
翌日になってしまった!と思う事もあるし、
企画書をだしてから、
一晩考えると、
こうした方が良いなと思う事は確かに多い。
そのため、良い物を作るには、
熟考した方が良いだろうし、
それこそが、美徳でもある。
しかし、
それが様々なスピード感のなさに
影響しているのではないか。
特に、日本の大企業ではなぜ意思決定が遅れがちだと
言われている。
組織とスピード感
例えば、ある営業マンが、
クライアントから、企画書を出せと、
3月1日に言われたとする。
その日の内に立案しても、
一日寝かせてから上司に見せた方が良いと思い、
3月2日に、課長に提出する。
課長は、一晩寝かせてから、
判断しようと思い、
3月3日に、部長に提出する。
部長も、一晩寝かせてから、
判断しようと思い、
3月4日に企画書の判定をし、
結果を伝える。
その結果、企画書の提出は、早くても、
3月4日になってしまう。
休日が挟まると、更に2日は延長される。
企画書に訂正が入り、
再度提出・検討となると、
更に遅くなり、
下手すると1週間後になってしまう。
コンプライアンス(法令遵守)の徹底は
大切だが、
組織が大きければ大きいほど、
案件が大きければ大きいほど、
時間はかかるだろう。
そのような流れを経て上がってきた企画書は、
確かに安定した質の高い、
素晴らしい企画書かもしれないが、
スピード感が遅いため、
タイミングを逃してしまう。
そのため、早く企画書を提出した競合会社と
クライアントが価格交渉に入ってしまうと、
後からの参入が厳しくなる。
何事もタイミング。
アメリカや中国のような大陸国家は、
ダメだったら次の土地へ行けばよいという
考えが根本にあるから、確かに早い。
島国である日本は、
信頼を欠いたら次の土地にいく事も
難しいので、
その土地で良いものを作ることに終始する。
相手のリズムが早く、
素早いタイミングを求める場合、
どうしても、
リズムがズレてしまいがちであり、
折角素晴らしい企画を立てても、
遅い、鮮度がないと思われてしまうようだ。
それではどうすれば良いのか。
情報の共有、抱え込まない、
抱え込ませない、相手の意見を尊重し、
適切に評価していく、風通しを良くしていく。
つまり、企業内の相互の信頼関係こそ大切だ。
3月1日に現場がすぐに企画を共有し
一晩寝かせてから、
3月2日にチーム全体で討議して、
一晩寝かせて、
3月3日に提出すれば良い。
どうしても熟成したければ、
浅漬けと、熟成仕込みの
2種類を同時進行で企画していく。
浅漬けを提出し、相手のリズムを掴んで
掴みが悪ければ、
同時進行の熟成仕込みを提出する。
それを支えるベースはチーム力。
チーム力を支えるのは、
人間力と、人間関係だ。
それに必要なのは、
共通した思想意識(考え方)と、
相互にお互いを論理的に理解する
人物解析能力だ。
冷静に考えられる人、
新しい事を考えられる人、
拡大解釈で考えられる人、
現実路線で考えられる人、
メンバーのそれぞれの性格を
各々が把握し、
それを尊重しあえば、
よりよいチームビルディングが可能になる。
暦学の人物解析プロファイリング技術は、
チームビルディングに活用できる。
そして、お互いを信頼する人間力強化、
及び、思想(考え方)の共有には、
毎朝15分でいいから、
東洋思想を社員全員が学ぶこと。
我々が現在毎朝行っている、
オンラインの活用などお勧めだ。
オンラインが常識化した
今でこそ可能な、新しい人材教育法。
当協会はこの2つの能力、
人間力強化と人物解析力を指導できる
会員育成を目指している。
チームとは何か!朋友だ!
朋友と言う言葉がある。
「朋」は同門の友、「友」は同志の友人
私にとって、
毎朝東洋思想を学びあっている仲間は、
遠方にいるにも関わらず、
智を共有し、東洋思想を広めたいと願う
友である。
協会の暦学士は、
古代中国で培われた暦学を
人物プロファイリング術として、
発展させたいと願う同門の朋であり、
解析結果を東洋哲理に基づき
ソリューションを提案することで、
これからの時代にこそ必要な
東洋思想を広めたいという高志を持った
友である。
企業において必要なのは、
朋友としてのチーム力ではないだろうか。
山脇史端