【原文】
「是故剛柔相摩。八卦相盪。鼓之以雷霆。潤之以風雨。
日月運行。一寒一暑。乾道成男。坤道成女。
乾知大始。坤作成物。乾以易知。坤以簡能。
易則易知。簡則易從。易知則有親。易從則有功。
有親則可久。有功則可大。可久則賢人之徳。可大則賢人之業。」
【現代語訳】
天地の法則に従い、剛(かたいもの)と柔(やわらかいもの)は互いに擦れ合いながら変化する。
八卦(はっけ)は互いに影響し合い、動きを生み出す。
雷が轟き、大地を揺るがし、風や雨が潤いをもたらす。
太陽と月は規則正しく運行し、寒さと暑さが交互に巡る。
乾(けん)は男性を生じ、坤(こん)は女性を生じる。
乾は、宇宙の大いなる始まりを知り、坤は万物を育て成長させる。
乾は、変化を知ることで道を理解し、坤は、単純明快な道理をもって物事を成し遂げる。
物事は「変化すれば理解しやすく(易知)」、
「単純であれば従いやすい(簡能)」という性質を持つ。
理解しやすければ、人々は親しみを持ち、
従いやすければ、行動が結果を生む。
親しみがあれば、関係は長続きし、
行動が結果を生めば、事業は大きく発展する。
長く続くことは、賢者の徳であり、
大きく発展することは、賢者の業である。
天と地は、固定したものではない。
天地の法則に従い、この世界は「剛(硬いもの・陽)」と「柔(柔らかいもの・陰)」が互いに影響を及ぼし合って変化をするものである。
『易経』に登場する八卦(はっけ)は、互いに作用して動きを生み出す。
雷は激しく大地を揺るがし、風と雨は潤いをもたらし、太陽と月は規則的に動いて季節の変化をつくりだす。
八卦とは、自然現象を八つの象徴に分類した考え方だ。
- 乾(けん):天、北西、乾風(天風)
- 坤(こん):地、南西、坤風(地風)
- 震(しん):雷、東、震風(雷風)
- 巽(そん):風、南東、巽風(風風)
- 坎(かん):水、北、坎風(水風)
- 離(り):火、南、離風(火風)
- 艮(ごん):山、北東、艮風(山風)
- 兌(だ):沢、西、兌風(沢風)
農耕民族にとって、季節ごとに吹く風(八風)は暦の誕生前から、季節の訪れを知らせ、生活を支える重要な指針となっていた。
人々は風の変化を通じて季節の流れを理解し、農作業や生活に役立ててきたのだ。
八卦は、この風や方位の知識をもとに、自然界の変化を理論的に整理・体系化したものである。
陽と陰の役割
乾(陽)は「創造」や「知恵」を象徴し、男性的な性質を持つ。
坤(陰)は「受容」や「成長」を象徴し、女性的な性質を持つ。
- 乾(陽)は物事を始めるための知恵を与える。
- 坤(陰)はその知恵を受け入れて、実際の形あるものに育て上げる。
また、物事には「変化が明快(易知)」であれば理解しやすく、「単純(簡能)」であれば従いやすいという原則がある。
- 理解しやすければ、人々に親しみが生まれ、関係は長続きする。
- 従いやすければ、人々は積極的に行動し、その行動が結果を生み、大きな成果や発展につながる。
なぜ簡素、シンプルが重要なのか
シンプルでわかりやすいルールや仕組みを作れば、人々は混乱せず、積極的に行動しやすくなる。
一方、昨今の気候変動や多国間の複雑な関係など、予測不能で複雑な状況では、人はどう対応してよいかわからなくなる。
人間関係でもビジネスでも、重要なのは複雑さを避け、できる限りシンプルで明快にすることだ。
これが、人々が自然に従い、時代の変化にも柔軟に対応できる環境を作る。
変化を上手く乗り越える智慧
- 長続きすること(徳):時を超えて存続する価値は、親しみやすく、柔軟性を持って変化に対応できることにある。
- 大きく発展すること(業):行動を促し、結果を生むことが必要であり、それにはシンプルで明快な道筋が不可欠だ。
複雑な問題に直面したら、まずはそれを単純化して、本質を明確にしましょう。不要な感情や欲を取り除き、「何が必要か」「どこから変化が生じているか」を明確にすることで、物事は自然に整理されます。
徳とは、こうした、物事を明快化することだ。
こうしたシンプルさと変化への理解こそが、時代を超えて長く続き、成功するための智慧であると言えます。
物事が複雑になるから、人々は何が何だか分らなくなり、時代が動乱する。
物事が複雑になればなるほど、始めて経験することになるため、人は従いにくくなり、柔軟な対応が困難になるのだ。
故に、まずは、どんな複雑な事も、簡素化することが大切である。
しがらみや我欲を取り去り、何が必要なのか、その本質だけを見極めることだ。
簡素になれば、八風を感じることができる。
八風、どの方位からどんな風が吹いているか、感じることができれば、変化の兆し、時代の流れを把握することができるのだ。
そういう意味では、トランプがやっていることは正しい方向なのかもしれない。