虚運と実運で、人間の運勢は、生まれ持ったものが6割、環境により作られるものが4割であると説明しました。
生まれ持った性質を核とすると、外的要因で変化していくのです。
紀元前5世紀前後は、面白い事に世界各地で《神様から人間を切り離して考えてみよう》と考える哲学者たちが同時に生まれた時期でした。
その時代を人間学の原点とし、生まれ持った性質60%とすると、その後の時代と環境により、色々な考え方に変化していったのが、《人間》だとすると、自分が今後どうすべきか、他の国の人がどういう理由でどう考えているのか…という問題の答が見つかるかも知れません。
それでは、プラトンの馬車の思想を、少し東にずらし、インドでは、どのように考えられていたのか見ていきましょう。
プラトンとインド思想
プラトンは、欲望という黒い馬の暴走を止めるためには、節制と気概(自ら進んで困難に立ち向かっていく強い意志)(Wiki)と、理性であり、理性には知恵が必要だと説明しています。
つまり、欲望を節制するには、セルフコントロール力と社会の為にと考える義憤のようなもの、そして冷静に考える知恵が必要だと説いたのです。
同じ馬車の例えが、「カタ・ウパニシャッド」というインド哲学書にも書かれています。
カタ・ウパニシャッドとは、紀元前1000年~500年前にインドで編纂されたヴェーダという宗教書の奥義書と言われているものです。
あなたは知るべきだ 馬車に乗っているのが霊魂であり、その馬車は肉体であると
あなたは知るべきだ 理性は御者であり
思考力はその手綱であると
感覚器官は馬であり、その対象となるのが馬の走る場所である。(3・3-4)
理性をもたず、思考力が制御されないならば
いかなる感覚器官も彼に従うことはない
暴れ馬が御者に従わないのと同様に
しかし、理性を持ち、よく思考力が制御されているならば、
全ての感覚器官がかれに従う
良き馬が業者に従うように (3・5-6)
理性を持たず、よく気づく事なく、つねに穢れている者
かれはかの境地に到達することなく、輪廻を続ける
しかし、理性をもち、よく気づき、常にきよらかな者
かれはその境地に到達し、もはやそこから輪廻することがない (3・7-8)
ここら辺までは、プラトンの三元徳と非常に近いものがあります。
その暴れ馬(黒い馬)を制御する解決法として、『カタウパニシャッド』の最終章に登場するのが、YOGA(ヨーガ)です!
感覚器官が完全に制御されたとき
人々はそれをヨーガであると考える。
もはやその人は心を乱すことがない
なぜなら、ヨーガはあらゆる幻影の生成を止滅させ、
究極の実在へといたる道であるから。
プラトンとヨガ
ヨガ(Yoga・ヨーガ)とは、もともと、『馬にくびきをつける』という意味のサンスクリット語yujiを語源とします。くびきの画像のリンクを張っておきます。
元々この言葉の起源は、インダス文明に遡るとされています。
『ヨーガ・スートラ』は現在YOGAを愛する方々必須の「基本教典」ですが、4世紀~5世紀に成立したこの基本経典の800年前の書、カタ・ウパニシャッドに、すでにこのようにこの言葉が登場しています。
ちなみに、アレキサンダー大王がインダス河流域に達したのは、紀元前326年です。
プラトン(紀元前427~347)の三元徳がカタ・ウパニシャッド(紀元前350年から紀元前300年頃)に影響したかどうか、検証文献を見つけることは出来ませんでした。
古代インダス文明に遡らないと検証出来ない部分があり、インダス文明は文字解読が非常に難しいらしく、最近はAIを使った研究もされているようなので、新たな発見もあると思います。
古代文字の解読を、最新技術のAIがやっているというのも、何だか逆説的。
AIが間違えた解釈をしても、誰もその間違いが分からない訳ですから…。
人間とは何だ! 未来はAIが規定してしまうのかも知れませんね。
ヨガ、禅、そしてマインドフルネス
パタンジャリによる編纂である『ヨーガ・スートラ」は、心の構造についての学問的な観察と、真理を開発する技術が論理的に書かれてある経書です。
仏教の流布と共に中国へ伝わり、禅へ影響しています。
YOGAは、1970年代にアメリカで人気となり、従来の修行的要素からフィットネス要素が加味され、セレブな女性達に受け入れられました。
禅(ZEN)は、スティーブ・ジョブズ氏が傾倒したこともあり、シリコンバレーを中心とした西海岸で現在大いなる人気を博しています。
毎日膨大な情報量に晒されているITのエリートたちが、ジョブズ氏に習い、自分を統御する方法として、禅の理論からマインドフルネスという言葉が生み出され、日本でも注目を浴びています。
ヨガも禅も、地球を半周してアメリカ西海岸まで達し、ファッショナブルに変身したことで、世界的文化へとステップアップが出来たようです。
マクロビオティックスも…。