孫子の兵法の極意 Seewer 瑞恵

私の担当は「教育現場における数理暦学の活⽤法」ですが、今回も脱線して別のお話をしようと思います。
今回は、今や世界中の経営者の愛読書となっていると⾔っても過⾔ではない『孫⼦』についてのお話です。⻑くなりますので、2 回に分けて書こうと思います。今回は1 回⽬前編です。

孫子

『孫⼦』は今から約2500 年前の古代中国・春秋時代の呉(ご)という国で武将だった孫武(そんぶ)が書き上げた、戦いに勝つための戦略書です。それ故、過去2500 年もの間、勝利を熱望する世界中の多くの⼈間が、その時代の解釈で読み継いだ書籍です。豊⾂秀吉、武⽥信⽞、ナポレオンも愛読者だったと⾔われています。現代は⼀部の地域を除いて戦争のない平和期ですが、⼈と組織が戦う意味で、現代のビジネスの世界は古代中国の戦場と同じものがあります。

そのためか、ソフトバンク会⻑・孫正義⽒も、Windows 創業者ビル・ゲイツ⽒も愛読し、ビジネスで成功しています。最近ではAmazon 創業者のジェフ・ベゾス⽒も経営戦
略に「孫⼦の兵法」を活⽤していることがわかりました。
兵法書にも関わらず、『孫⼦』はなぜ現在でもこんなに多くの⼈に愛読されているのでしょう。その理由を私なりに探るために、本腰を⼊れて『孫⼦』を読んでみることにしました。

私が『孫⼦』に辿り着くまでには、息⼦の存在が⼤きく、恐らく息⼦から「司⾺懿(しばい)」という名を聞かなかったら、読むまでには到らなかったと思うのです。
というわけで、『孫⼦』に⾏き着くまでの経緯をまずは説明させてください。
⽇⼲⽀「庚申(こうきんのさる)」(直近の染⾕先⽣のブログに「庚申」について書かれています。コチラからどうぞ)の息⼦は、今年になって知ったのですが、中学時代、古代中国の武将・軍師のカードゲームオタクでした(苦笑)。

当時、勉強そっちのけでカードゲームにハマっていたのは知っていたのですが、何のカードかは知る由もなし。

ただ、図書館で「三国志」や「封神演義」をしょっちゅう借りていたので、今思えばそういうことだったのかと納得です。いかにも戦いの神様「庚申(こうきんのさる)」が⽇⼲⽀の息⼦らしい趣味だったかと(笑)。
そんな息⼦に、「⼲⽀暦学を学んでいるお⺟さんなら司⾺懿(しばい)は知っとるよね?」と⾔われ、「ん⁈誰それ?」と焦って調べているところに、偶然にもWOWOW で中国歴史ドラマ「三国志〜司⾺懿 軍事連盟〜」が始まることを知り、視聴することにしました。
司⾺懿(しばい)は三国時代に最⼤の国家として君臨した魏(ぎ)を導いた軍師です。魏の基礎を築いた曹操(そうそう)、その息⼦・曹丕(そうひ)に仕えました。蜀(しょく)の軍師・諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)の永遠のライバルで、その才能を曹操(そうそう)も恐れていたと⾔われるほど、知略に⻑けていました。
そんな司⾺懿(しばい)を描いたこのドラマはなんと!86 話もあります!!!10月中旬現在、やっと26話までが放映されました。全話放映を終えるのは、恐らく来年の初夏頃でしょう。

気が遠くなります(汗)。が、とても興味深い内容なのと、役者が皆すばらしい!男優はイケメン揃いだし、⼥優はお⼈形さんかと思うほどに美しい!特に、司⾺懿(しばい)を演じている俳優ウー・ショウポーが、若かりし頃の⽥村正和似の、私好みのなかなか渋い役者さんなので(笑)、リタイアすることなく全話観れそうです。
おっと、脱線しかけました(汗)。
さて、このドラマの台詞には頻繁に『孫⼦』からの引⽤⽂が出てきます。司⾺懿(しばい)だけでなく、曹操(そうそう)に仕えていた他の軍師たちの⼝からも、「孫⼦の兵法」が度々出てきます。後で知ったのですが、曹操(そうそう)も『孫⼦』を愛読し、注釈書まで書き、魏の幹部将軍たちにそれを配布し、将軍たちの教育に使⽤していたと⾔われています。そのため、曹操(そうそう)に仕えていた司⾺懿(しばい)は「孫⼦の兵法」を忠実に守るタイプだったようです。

余談ですが、諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)は「孫⼦の兵法」の枠を超えた知略家だったそうです。
こうして、ドラマが進むにつれて「孫⼦の兵法」が台詞中に頻繁に出てくるので、ドラマを2 倍楽しむには「孫⼦の兵法」を知るしかない!と思ったことが、私が『孫⼦』を読み始めるきっかけでした。と同時に、内容がわかれば、2500 年間も『孫⼦』が読み継がれた理由がわかるのではないか、司⾺懿(しばい)についてもより理解できるのではないか、お!⼀⽯⼆⿃どころか、⼀⽯三⿃じゃないか⁈と思ったわけです。

これが、私が『孫⼦』に辿り着いた経緯です。息⼦に感謝!カードゲームに感謝!(笑)

 

私からみた《孫子の兵法》

それでは、ここから「孫⼦の兵法」を私⾒を交えながら解釈していきたいと思います。
意外に思われるかもしれませんが、『孫⼦』は兵法書でありながら、イケイケどんどん!という必勝法を教えてくれる本ではありません。「戦う⽬的は単に勝利ではなく、何らかの利益を得ることなので、利益が出ない戦いは避けるべき」、とする前提のもとに書かれている守備本・リスク管理本だと私は思います。

戦うのは有利な時だけ。勝利を100%確信できた時だけ。それ以外の時は戦わない。不利な時はやめる勇気を出して逃げる。
そして、何よりも⼤切なのはリスクを認識すること。対策をしなければ、リスクは現実になる。

 

リスク対策を怠る原因

リスク対策を怠る原因には⼆つある。

⼀つは情報不⾜によりリスクに気づかない場合過信からリスクを⽢く⾒る場合があるが、いずれにしろ、リスクをリスクとして認識してい
ないから対策ができない。よって、負ける。このように、「攻めより守り」が根底にある兵法書と私は解釈しました。
それはこの冒頭部分からも明らかです。

兵は国の⼤事なり。死⽣の地、存亡の道、察せざるべからず。

戦争は国家の重⼤事であり、国⺠は⽣きるか死ぬか、国家は残るか滅びるか、重⼤な結果に⾄るもの。

だからこそよく考えて⾏動しなくてはならない、と説いています。冒頭からいきなり守りの姿勢です!

「兵」と「国」を様々な⾔葉に⼊れ替えてみます。
「投資は会社の⼤事なり」
「新規出店は会社の⼤事なり」
「起業は⼰の⼤事なり」
「受験は⼰の⼤事なり」
「恋は⼰の⼤事なり」
「結婚は⼰の⼤事なり」

どれも失敗すると負担が⼤きいことばかりです。それゆえ、負けた時のリスクを認識し、対策をよく考えて、勝利が確信できた時にだけ戦いを仕掛け、不利ならばやめる勇気も必要です。

こちらも有名な⽂⾔です。

彼を知りて ⼰を知れば、百戦して殆(あや)うからず。
彼を知らずして ⼰を知れば、⼀勝⼀負す。
彼を知らず ⼰を知らざれば、戦うごとに必ず殆(あや)うし。

敵情と⾝内のことをよく知って判断すれば、何回戦っても危険はないということです。
これも「彼」を現代⾵に⼊れ替えます。ライバル社、新規事業、志望校、好きな⼈、結婚相⼿、結婚そのもの…など。
志望校の情報はしっかり集めましたか。過去問を解いて傾向と対策はつかめましたか。その学校に通う学⽣の⽣活、卒業後の進路についても調べましたか。
結婚前にしっかり相⼿のこと、相⼿の家族のことを調べましたか。⾃⼰分析もきちんとしましたか。結婚後どのような⽣活が待っているかしっかり調べましたか。
正確な情報を収集し、負けのリスクを認識し、対策できなければ、やはり「彼」には勝てません。

次は『孫⼦』の中で、世界的に最も有名な⾔葉ではないでしょうか。

百戦百勝は、善の善なる者に⾮(あら)ざるなり。
戦わずして⼈の兵を屈するが、善の善なる者なり。

百戦百勝は最善とは⾔えない。戦わないで敵を降服させることこそ最善である。被害を出さないのが最上で、撃破するのは⼆の次。戦って勝つより戦わずして勝つことが最上、という意味です。

先述したように、孫武の戦いの⽬的はあくまで利益を伴った勝利であって、戦いそのものではありません。利益をより多く得るためには、できるだけ敵にダメージを与えないことです。
現代の敵は何でしょう。新しい取り組みやこれから始めようとすることではないでしょうか。戦うこととは、時間・労⼒・資⾦をその取り組みに注ぎ込むことです。

⼀回戦うたびに、私たちは時間と労⼒と資⾦を投⼊しています。仕事も受験も恋愛も結婚も戦いです。孫武は戦うこと⾃体をリスクだと⾔っています。利益や結果が得られなければ、⾃軍が疲弊するばかりです。
ビジネスでは⼩さな資⾦と労⼒で、⼤きな⽬標達成を狙うことが重要です。「百戦百勝は善の善なる者に⾮ざるなり」とは、「できるだけ戦わずに勝つことを考えよう!」そしてその⾔葉の裏には「勝てそうになければ、勇気を出して逃げて、再度作戦を練り直そう!」という孫武からのメッセージがあると私は思うのです。

最後に。
司⾺懿(しばい)のドラマと並⾏して、法曹界を舞台にした韓国ドラマ「SUIT」も観ているのですが(笑)、弁護⼠の卵の2 ⼈が模擬裁判を先輩弁護⼠たちの前でするのですが、その前⽇の台詞です。

「百戦百勝は最善にあらず。戦わずして屈服させよ。」
その後2 ⼈はあえて和解に導く模擬裁判をすることにします。
どうやら韓国でも「孫⼦の兵法」は⼈気のようです。

さて、⻑くなりましたので、前編はこの辺で終わりにします。
後編は、⽇⼲⽀「庚申(こうきんのさる)」、表相中央「寛容」、ライフナビゲーター「官僚」で、個⼈投資家としてご飯を⾷べている息⼦が、どのように「孫⼦の兵法」を投資の世界に活⽤しているかのお話も織り交ぜながらブログを書いていきます。
お楽しみに!

 

Seewer 瑞恵