グローバリゼーションと人材育成

《史観的にとらえる運命学》 前回はアリストテレスまでお話ししましたが、いよいよヘレニズムに入ります。

アレクサンドロス大王の東方遠征とは、世界初のグローバリゼーション。

人類史上初のグローバリゼーションから、現在進行形のグローバリゼーションにおける経営のヒントが見つかればと思っております。

 

アレクサンドロス大王の遠征算命学

マケドニア(ギリシャのポリスのひとつ)の王子、アレクサンドロス(アレクサンダー大王)は、やり手の父親を持った御曹司。

13歳の頃、アリストテレスから3年間学ぶなど、英才教育を受けて育ちました。

父、フィリッポス2世は、世界制覇をめざしマケドニアをギリシャ最強の国家へと成長させます。さらに東の大国ペルシア帝国制覇を目指しましすが、道半ばで暗殺されてしまいます。

その時、王子は若干20歳。

つまり、彼は父親の遺志を継いで大偉業を成し遂げた、跡継ぎ社長です。

紀元前334年、父の後のアジア制覇計画の夢を引き継ぎ、東の大国、ペルシア帝国を制覇します。そして更に中央アジアを侵攻し、インド征服を目指しますが、インダス川を越え、インド進出を目指した当たりで「もういい加減にしようよぉ。この国かなり独特だぜ。」と、兵士たちの反対にあい、引き返すことになります。

その後、紀元前323年、バビロンの地にて急に発熱、32歳の若さで息を引き取ります。

父の跡を継ぎ、わずか12年間で、彼はエジプト・ギリシア・メソポタミアを結ぶ一大帝国を築き上げました。

 

ヘレニズム算命学

彼の死後、帝国は部下たちにより分割されてヘレニズム諸国となります。

アレクサンドロス大王の死後から、最後のヘレニズム王朝であるエジプトのプトレマイオス朝が滅亡するまでの約300年間をヘレニズム時代、またそこで生まれた東西が融合した文化をヘレニズム文化と呼びます。ちなみに、プトレマイオス朝の最後の女王が、クレオパトラです。

ちなみに、ヘレニズムとは、ギリシャ人たちが自分たちのことを「ヘレネス」と言うことに由来して付けられた、19世紀のドイツの歴史家のドロイゼンによる造語です。

世界初のグローバリゼーションを成し遂げたアレクサンドロス大王の制覇の特徴は、人種融合政策です。

征服した帝国、ペルシャの習慣を大切にし、ペルシア人の貴婦人とマケドニアの貴族との結婚を強制、自らもペルシャ王の娘と結婚します。この時代の征服王としては非常に珍しいことです。

そのため、イスラム世界ではアレクサンドロスはイスカンダルという名前となり、ペルシャの英雄伝説として語り伝えられる事になります。

 

暦学におけるヘレニズムの影響

アレクサンドロスの大遠征により、暦学も大きな発展を遂げます。

メソポタミア文明のバビロニアの関数的な天文学と、ギリシャの幾何学的な天文学が融合し新たな局面へと発展していくのです。

元々ギリシャでは暦学そのものは未発達でしたが、ヘレニズムにより、砂漠の民バビロニア(アケメネス朝のペルシャ)の高度な科学がギリシャへと伝わりました。

例えば「メトン周期」と呼ばれるものがあります。
これは、太陰暦と太陽暦の関係を調整するために、19年間に7回の閏月を入れて挿入する方法で、これもバビロニア暦から学んだものだとされています。

ヘレニズム文化とは、元々非常に向学的な民衆国家のギリシャが、アレクサンドロス大王の制覇により、メソポタミア・エジプト文化を貪欲に吸収し、それらをすべてヘレニズム(ギリシャ風)に仕上げた事にあります。

混沌とする今の時代のグローバリゼーションを、我が国が生き抜くためにいは、ギリシャの民のように貪欲に知識を吸収する、向学心溢れる人材を育成することが急務でしょう。

今から150年前の明治維新は、我が国にとり始めての国際的グローバリゼーションの大動乱期でした。

アジア諸国が植民地化される中で、奇跡的に欧米先進国と短時間で肩を並べるに至ったのは、江戸時代の《向学心溢れる民衆》の存在が功を成したといえます。

ごく一部の知識層がいるレベルではダメで、貪欲なまでの知的好奇心のある多くの人材育成こそが大切です。
管理職は勿論のこと、一般社員の知的好奇心育成が大切になるのです。

 

グローバリゼーションの人材育成

ヘレニズムの特徴は、貪欲に他国の優れたもの・他社の優れたものを吸収した事にあります。ギリシャ的な価値観が優越して征服した国の文化を支配したのではなく、異なった文化の良い所を貪欲に吸収しながら、自分達風に作り替えたということに大いなる意義があるのです。

これはギリシャが海洋国家であるがゆえの考え方かもしれません。もともと海洋国家はバイキング的な発想があるため、制服したものを柔軟に取り入れる質があります。

日本も同じく海洋国家。

アジアから押し寄せるグローバリゼーションの波を、柔軟に取り入れる人材育成が急務となります。

それにはまず、向学心溢れる社員を教育しましょう。

いかにして教育するかというと、ギリシャ風だと、《図書館+自由に発言する場》の提供です。

社内にカフェテリアを作り、そこに社員に読んで貰いたい書籍を置いて貸し出しをする。時々社長もカフェで社員と雑談をし、気軽な雰囲気でプレゼンが出来る場を作りだす。いきなり社長がいくとドン引きするかも知れませんので、女性役員なんかを最初に送り込むのも手ですし、社長自らがラフな雰囲気で立ち寄り、熱く語ることも大切です。

又、社長自身が、他会社の人材を育成する客員講師を行う事も有効なようです。

自社の人材育成となると見えてこない部分が、他人の会社の人材育成を手伝うことで、見えてくる部分は大いにあります。また、その経験をもとに、他社の社員はこんな風に考えていたぞと語ると、自社の社員たちもライバル心を抱き、自ずと好奇心を抱くでしょう。

社長が熱く語っても、社員がダンマリの場合はどうしたら良いのでしょうか?

《自分の意見を自由に言う》為に、ギリシャ人たちが辿りついたのが、哲学です。

つまり、《自分とは何か?》

それが明確でないと、「余計な事を言って、空気読めない人間だと思われるとヤバイよな。」と不安になり、だんまり君になってしまうのです。

「自分は、こういう人間だから、こういう発言をする。だから聞いて欲しい」というしっかりとしたものがないと、プレゼンなどは出来ません。

「自分の意見」をきちんと言うには、《自分》というアイデンティティが確立していないと、出来るはずはありません。

「自分」が分からないから、会議でも「だんまり」「事なかれ主義」「無難に時を過ごす人」が多くなるのです。

 

ゴルディアスの結び目

アレクサンドロスが、ペルシャの街を占領した時のこと、町の中心の神殿に一代の古い戦車が祀られていました。
その戦車は複雑に絡み合った縄でがんじがらめに縛られており、その縄は、“ゴルディオスの結び目”と呼ばれていました。「この結び目を解いたものがアジアの支配者になる」という伝説が伝えられており、それまで多くの人が挑んできましたが、数百年間、誰も解く事が出来ませんでした。その伝説を聞いたアレクサンドロスは、剣を振り上げ、結び目を一刀切断してしまいます。

「運命とは伝説によってもたらされるものではなく、自らの剣によって切りひらくものである」・・・と語った逸話です。

時代とは、融合と分離という2つの流れで動きます。

分離から融合に向かう時に起きるのが、グローバリゼーションの波です。 この動乱期には、アレクサンドロスのように、先入観を切り捨て大胆な方法で解決してしまう人が覇者となります。

信長の延暦寺焼き討ちなどもその例です。しかし、運命学的にはそれを行う開拓者になるには、鋭い感性と図太い神経という相反する二つの感性をコントロールする多大なエネルギーが必要となります。故に、それを行える者は開拓者であり、利を得るのは開墾者となります。

会社をグローバリゼーションの波に対応させたければ、経営者はまず、開拓者と開墾者を見定めるべきです。

自らがなる必要はなく、なってはいけません。理由は、経営者は「鳥の眼・虫の眼・魚の眼」を持つ必要はありますが、鳥になってもいけませんし、虫になってもいけませんし、魚になってもいけないからです。

勿論スタートアップ時は城を築くことが大切なので、自らが開拓し開墾しながら、築城する必要はありますが、グローバリゼーションへの対応は全くの別物です。グローバリゼーションは水の流れですから、大局的視点に立ち見定める眼が必要となります。

また、社員でも、同一人物が《開拓者》と《開墾者》の同じ役割を行うことは出来ません。もしそれが出来る人材がいたとしたら、簡単に会社は乗っ取られるか、独立して起業するでしょう。

経営者自身は、開拓者でも開墾者でもある必要はなく、その利を得、それを更に発展させることが役割となりますが、時には開拓者のふりをして、時には開墾者を演じながら共に汗を流す必要はあるのです。

 

グローバリゼーションのその後

グローバリゼーションがおきると、血縁や地縁社会が崩壊し、実力主義が正しい社会理念とされるようになります。そして、豊かなものがますます豊かになり、貧しいものがますます貧しくなる、貧富の格差が拡がります。

そして、その先はどうなるかというと、300年間のヘレニズム時代を経て、ローマ帝国が成立しています。

現在のグローバリゼーションの帝国といったら、まずは思い浮かぶのは、海外資本によるプラットフォーム化でしょう。

Gafaという帝国の名前を聞いたことありますか?そう、Google Aamazon Facebook Appleのことです。

中国も帝国化構想を掲げています。

日本人もちょっと昔に我を忘れて帝国主義にはまりましたが、ご存知の通り、かなりの無理がありました。

しかし、ヘレニズム化という構想はアリです。

なんでもかんでも、ジャポニズム化。

そこにわが国の未来と役割があるのかもしれませんね。

ちなみに、ヨーロッパはヘレニズム+ヘブライズムという思想背景です。

新約聖書は、ヘブライ語で書かれたものを翻訳されたものではなく、最初からギリシア語で書かれているのです。

恐るべし!ギリシャ風化、ヘレニズム!!